はじめに

「大家さんから『築年数が古く、地震が来たら倒壊の危険(耐震不足)があるから、すぐに立ち退いてほしい』と言われた。老朽化が理由だと、立退料は安くなってしまうの?」

木造アパートや古い賃貸マンションにお住まいの方から、当センターに最も多く寄せられる切実なご相談の一つが、この「老朽化・耐震不足」を理由とした立ち退き通告です。

結論から申し上げます。「大家が『古い、危ない』と言ってきたからといって、それだけで立退料が安くなったり、0円で退去しなければならなかったりするわけではありません」。

大家側は「命の危険」や「建物の寿命」を大義名分にして、借主様に「お金(立退料)を請求するのは我が儘だ」という心理的プレッシャーをかけてきますが、法的な観点や過去の判例実務から見れば、その言い分には多くの「抜け穴」があります。

本記事では、札幌を拠点に立ち退き問題を解決してきた「リーガル・ケアセンター」の代表・田村三平(認定司法書士・宅建士・1級FP)が、実務40年の経験を基に、老朽化物件における立退料の真の相場と、大家から「耐震不足」と脅されたときに形勢を大逆転させるための正しい対処法を徹底解説します。

1. そもそも「老朽化・耐震不足」なら立退料は安くなるのか?

この疑問に対する正確な答えは、「客観的な証拠(データ)の有無によって、立退料の額は天と地ほど変わる」です。

借主を強制的に退去させるために必要な「正当事由(正当な理由)」の強さは、建物の古さそのものではなく、「その建物が今すぐ崩壊し、人命を奪うレベルで本当に危険かどうか」という客観的事実で判断されます。

大家の「主観」だけなら、立退料は安くならない

大家や管理会社が「築40年で古いから」「壁にヒビが入っていて危ないから」と口頭で言ってくるだけの状態は、法律上は単なる大家の「主観(思い込み)」に過ぎません。

この場合、大家側の正当事由は極めて「弱い」とみなされるため、立退料が安くなるどころか、これまでの記事で解説してきた「移転実費 + 新居との差額賃料2年分 + 迷惑料」の満額(家賃の20ヶ月分、場合によってはそれ以上)を堂々と請求することができます。

実際に立退料が下がる「唯一の例外」とは?

逆に、裁判所から指定された専門機関などによる正式な「耐震診断」が行われており、「大規模な地震で確実に倒壊する(補強も不可能)」という公的な診断書がある場合は、大家側の正当事由が「強い」と判断されます。

このような極端なケースに限り、立ち退き料の額が相場(家賃の6ヶ月分程度、あるいは引越し実費のみ)に減額される傾向にあります。しかし、実務において「事前にそこまで完璧な耐震診断書を用意している大家」は、全体の1割もいません。

2. 大家から「耐震不足だから出ていって」と言われた時の4つの対処ステップ

もしあなたが今、大家側から老朽化を理由に立ち退きを迫られているなら、次の4つのステップを踏んで相手のハッタリを見破りましょう。

ステップ①:「耐震診断書」の開示を求める

大家や管理会社に対して、感情的にならず、静かにこう切り返してください。 「建物が危険だという客観的なデータ(耐震診断結果報告書など)の写しをいただけますか?」

不動産会社や大家は、診断費用(数十万〜数百万円)を惜しんで、耐震診断すら受けていないケースがほとんどです。もし「診断はしていないが、見れば古いとわかるだろう」などと言ってきたら、交渉の主導権はこちらのものです。「客観的な危険性が証明されない限り、通常の立退料を基礎とした話し合いを求めます」と主張できます。

ステップ②:「修繕義務の放棄」を指摘する

大家には、借主が安全に暮らせるように建物を維持管理する法律上の義務(修繕義務)があります。 「古いから危ない」というのは、裏を返せば「大家が長年、適切なメンテナンスや修繕を怠ってきた(義務違反)」ということでもあります。

自分が建物の手入れをサボっておきながら、「古くなったから1円も払わずに勝手に出ていけ」という理屈は、裁判所でも「信義則(社会的な誠実さのルール)に反する」として大家側に厳しくペナルティが科される要因になります。

ステップ③:建物の「固定資産税評価額」を調べる(プロの裏技)

ここが、リーガル・ケアセンターが最も得意とする法的戦略の核です。 「老朽化アパートだから、交渉がこじれたらすぐに裁判(強制執行)で追い出されるのでは…」と怯える必要はありません。

古い物件であればあるほど、建物の「固定資産税評価額」は下がっています。 建物(賃貸部分)の評価額が280万円以下の老朽化アパートであれば、裁判上のルール(訴額の計算方法)により、認定司法書士があなたの法的代理人として大家側と直接交渉・和解・提訴を行うことができます。

ステップ④:すべて「書面(回答書)」でやり取りする

プロの管理会社は、口頭で「裁判になったら一銭も貰えなくなりますよ」などと脅し(揺さぶり)をかけてきます。これに口頭で言い返してはいけません。 こちらが求める適正な立退料の内訳を理路整然と並べた「回答書」を作成し、内容証明郵便等で突きつけることで、相手の不当な買い叩きを完全に封じ込めることができます。

3. 【実例比較】老朽化物件での「言いなり退去」vs「ロジカル増額」

当センターが実際に担当した、古いアパートにおける劇的な大逆転事例をご紹介します。

【事例:築45年の木造アパートに住むCさん(60代女性)】 大家から「耐震性がなく、地震が来たら危ないから3ヶ月後に出ていってほしい。引越し代として20万円(家賃4ヶ月分)出す」と言われ、パニックになって当センターへ相談に来られました。

【リーガル・ケアセンターの調査と介入】

  1. 大家側に耐震診断の有無を確認したところ、未実施であることが判明。ただ「見た目が古いから」という理由でした。
  2. 建物の固定資産税評価額はわずか120万円。当センター(認定司法書士)が全権代理人として介入することを確定。
  3. Cさんが高齢であり、近隣の病院へ通院しているという「居住継続の必要性」と、新居との「家賃差額2年分」をロジカルに算出して大家側に書面で対抗。

【結果】 大家側は弁護士を立てて抗戦してきましたが、当センターが法理に基づいた反論を続けた結果、最終的に当初提示の20万円から「総額140万円(家賃28ヶ月分相当)」へと大幅な増額を勝ち取り、円満解決となりました。

4. 大家都合の「老朽化立ち退き」で借主が絶対にやってはいけない2大NG

どれだけ大家側の言い分が理不尽であっても、借主様が以下の行動をとってしまうと、その瞬間にすべての権利を失い、1円も貰えずに追い出されることになります。

NG①:恐怖心から「立ち退き合意書」にその場でサインする

管理会社から「今サインしないと、建替えの手続きが進むので引越し代すら出せなくなりますよ」などと期限を区切られて迫られることがあります。 しかし、日本の法律では、一度お互いにサインして成立した合意(契約)は、後から「相場より安すぎた」と気づいても原則として絶対に白紙撤回できません。必ず「専門家に一度確認します」と言って書面を預かってください。

NG②:腹を立てて「毎月の家賃」をストップする

「こんな古いアパートで退去を迫るような大家に、家賃なんか払うものか!」と、嫌がらせのつもりで家賃の支払いを止める人がいますが、これは最悪の自爆行為です。 家賃を2〜3ヶ月滞納した瞬間、大家側は「老朽化」という弱い退去理由を捨て、「借主の家賃不払いによる契約解除(最強の正当事由)」に切り替えて裁判を起こしてきます。こうなると、立退料を貰う権利は100%消滅し、合法的に強制退去処分となってしまいます。

5. 司法書士・宅建士・1級FPのトリプル視点だからできること

老朽化物件の立ち退きは、単なる法律の知識だけでなく、「建物の物理的な価値」や「移転後の生活設計」が複雑に絡み合います。

  • 司法書士として: 建物評価額280万円以下の物件において、大家側が雇う立ち退きコンサルタントや管理会社を相手に、判例に基づいた強固なロジックで直接対峙します。
  • 宅建士として: 建物の構造や築年数、周辺のリアルな賃料相場を分析し、「老朽化を理由にした退去要求がいかに不当か」「同条件の新居を探すのにいかに費用がかかるか」を客観的データで立証します。
  • 1級FPとして: 獲得した立退料にかかる税金のコントロール(一時所得の特例活用など)や、引っ越し後の家計が圧迫されないためのライフプランまでトータルにナビゲートします。

実務経験40年の当センター代表・田村三平は、古い物件だからと足元を見られ、不当に買い叩かれそうになっていた数え切れないほどの借主様の笑顔を取り戻してきました。

6. まとめ:古い物件だからこそ、あなたの「居住権」の価値は高い

「古いアパートだから、言われた通りに出ていくしかない」と思い込まないでください。

あなたがその場所で長年築いてきた大切な生活、そして急な移転によって発生する未来の経済的負担。それらを大家都合で壊す以上、大家側にはそれを穴埋めするだけの「誠意(適正な立退料)」を支払う義務があります。

大家さんから提示された金額や言い分に、少しでも「強引で納得がいかない」「このお金じゃ次の生活が始められない」と感じたら、手遅れになる前にリーガル・ケアセンターへご相談ください。

プロの厳しい目で相手の主張の真偽を暴き、あなたにとって最大の、そして最も正当な解決策を導き出すことをお約束します。
      
立退要求を受けお困りの方や立退料(増額)請求を望む方のご相談は、次の公式ページへどうぞう。
札幌の明渡立退料の増額交渉・着手0円の成功報酬|入居者支援

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執筆・監修:田村 三平(Tamura Sampei)代表者あいさつはこちら
認定司法書士 / 宅建士 / 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
40年以上の実務経験を持つ、不動産と法務のスペシャリスト。「リーガル・ケアセンター」代表。

認定司法書士として、建物(賃借部分)評価額280万円以下の物件における「立退料交渉」などの代理業務に精通。立退料を明渡しの付帯請求として一括サポート可能な強みを活かし、数多くの円満解決・増額実績を持つ。宅建士・FPとしての知見を掛け合わせ、移転先の物件紹介まで見据えたアドバイスが好評。